HOME > 歯の寿命を決める神経治療
歯が痛いからと言って、もし神経を抜く治療を受けたことがあるとしたら、それはとても残念なことです。
歯の痛みの原因は、神経によるものとは限りません。歯周病、かみ合わせ、一時的な炎症など、さまざまな理由が考えられます。
歯が痛む理由をつきとめて治療をするよりも、神経を抜くほうが簡単なため、残念なことに、「痛いから神経を抜く」治療を行っている歯医者さんは少なくないようです。
歯の神経を抜くと歯が割れやすくなりトラブルもおきやすくなります。
また、神経を抜いてしまっているので、深刻な事態になるまで気づかずに放置してしまいがちです。
安易に神経を抜く治療を繰り返すのではなく、さまざまな原因を検討することが大切です。
歯の神経(歯髄)働きはとても重要で、どれが欠けても私たちの生活の質に関わります。
根管治療でこれを抜いてしまうと、まず防御反応が働かないので、細菌に感染しやすくなってしまいます。しかも痛みや異常を感じないので、虫歯が進んでもわかりません。昔根管治療を行った歯の被せ物を取ったところ、土台の歯の虫歯が進行していて深刻な状態だったというのは、歯科医が頻繁に出会うケースです。また歯の根が細菌に感染して膿がたまる病気になることもあります。
さらに神経を抜いた歯は栄養が届いていないので、非常にもろくなります。健康な歯が大地にしっかり根をはった木なら、根管治療を行い神経を取った歯は枯れ木のようなもの。ちょっとした刺激で簡単にヒビが入って割れてしまい、結果、根が割れてしまい抜歯となるケースはかなり多いです。
神経を取った歯は、一般的に寿命がほぼ半分になります。例えば 20代、30代で神経を取る治療をした歯なら、50歳過ぎには抜歯になってしまいます。本当なら一生使わなければいけない歯が50代頃で駄目になってしまうのです。
歯の健康を考えれば、できるだけ歯の神経を抜かないことはもちろんですが、どうしても歯の神経を抜かなくてはいけなくても、定期的に経過を観察することが大切です。
神経の痛みの度合いとレントゲンの写真を確認していくことで、神経を抜く時期を見きわめていきます。
その結果として、神経を抜く時期を遅らせることができるとしたら、その後の歯の寿命を延ばすことも可能だと思います。
虫歯が認められ、治療を行いました。
削った箇所には、金属の詰め物を入れました。
治療前
虫歯治療後
以前より「時々しみる」とおっしゃっていた治療した歯が「たまに痛い」とご相談を受けました。
詰め物に使用した金属は熱が伝わりやすい旨お伝えし、熱が伝わりにくいプラスチックの詰め物に変更してみることにしました。
金属の詰め物
詰め物をプラスチックに変更後
根管治療後
神経が感染をおこしていると判断したため、神経を抜く根管治療を行いました。
適切な根管治療で、いい状態を維持しています。
初診より2年半経過した時点で、結果として神経を抜く治療を行うことになりましたが、歯のためには、できるだけ歯を抜いたり、神経を抜かないで治療する方向を模索することが大切です。
この方の場合も、2年半、神経を抜かずに様子を見たことで、長い目で見れば、歯の寿命を少しのばすことができたかもしれません。
基本は保険診療です。